アパートやマンションを経営する不動産オーナーにとって、所有物件がゴミ屋敷化することは、経営の存続を揺るがす重大なリスクとなります。賃借人がゴミ屋敷問題を引き起こした場合、その損害は単に部屋が汚れるだけでは済みません。壁紙や床材に染み付いた強烈な悪臭は、通常のクリーニングでは落ちず、スケルトン状態にするほどの大規模なリフォームが必要になることがあります。さらに、排水管の詰まりや漏水、害虫の発生によって他の住人が退去してしまう「二次被害」が発生し、物件全体の資産価値が著しく低下することもあります。しかし、オーナーがゴミ屋敷問題に対処しようとしても、入居者の「居住権」という強力な法的権利が壁となります。例えゴミで溢れかえっていても、無断で部屋に立ち入ったり、勝手に物を処分したりすれば、不法侵入や器物損壊で訴えられる可能性があるからです。契約解除や立ち退きを求めるにしても、裁判手続きには半年から一年以上の時間と多額の弁護士費用がかかり、その間の家賃滞納も重なれば、オーナー側の損失は数百万単位に膨れ上がります。このような事態を避けるために、近年では賃貸借契約時に「ゴミ屋敷化の禁止」や「定期的な室内確認の同意」を盛り込むケースが増えていますが、根本的な対策は早期発見に尽きます。管理会社によるこまめな巡回や、他の入居者からの「最近廊下が臭う」「ベランダにゴミが出されている」といった些細な苦情を放置しないことが重要です。また、最近ではゴミ屋敷清掃費用をカバーする火災保険の特約や、孤立死・事故物件対応の保険も登場しており、リスクヘッジの一環として注目されています。不動産経営におけるゴミ屋敷問題は、入居者の生活の変化を敏感に察知し、必要であれば行政の福祉部門とも連携して早期介入を行うという、積極的なマネジメントが求められる時代になっています。オーナー自身の財産を守るためにも、ゴミ屋敷問題を「店借人の勝手」と突き放すのではなく、適切な距離感を保ちながら入居者の異変を見守る姿勢が、安定した経営の鍵となるのです。