私の部屋が、誰の目にも明らかなゴミ屋敷へと変わってしまったのは、ほんの些細なきっかけからでした。当時は仕事がひどく忙しく、毎日深夜に帰宅してはコンビニの弁当を食べてそのまま眠るという生活を繰り返していました。その頃の私に現れていた最初の前兆は、ゴミ出しの日を一度だけ忘れたことでした。たった一回、燃えるゴミを出しそびれただけで、部屋の隅には一袋分のゴミが残りました。その時は「来週出せばいい」と軽く考えていましたが、その一袋があることで、部屋の清潔さに対する心理的な障壁がガタガタと崩れ去っていったのです。一袋が二袋になり、二袋が四袋になる。ゴミ袋が視界にあることに慣れてしまうと、不思議なことに、その周りにゴミが散らばっていても不快感を感じなくなっていきます。次に現れた前兆は、水回りの汚れの放置でした。キッチンのシンクに洗い物が溜まり、お風呂場の掃除を後回しにするようになったとき、私のセルフネグレクトは加速していました。自分の体を洗う場所や、口にするものを扱う場所を不潔なままにしておけるというのは、自分自身を大切に扱うことを放棄したという何よりの証拠だったのです。それでも外では、小綺麗な服を着て普通に働いていました。しかし、家という誰の目も届かない空間では、私は確実にゴミの中に埋もれていきました。さらに決定的だった前兆は、床に物を置くことが習慣化したことでした。収納場所を考えるエネルギーを失い、買ってきたものや脱いだものを全て床に直置きするようになると、掃除機をかけるという行為自体が不可能になります。床が見えなくなると、そこはもう「床」ではなく「物の集積場」に変わります。今振り返れば、あの最初のゴミ出し忘れの夜に、自分の心の疲れを認めて誰かに頼るなり、無理をしてでもゴミを出すなりしていれば、数年間にわたる暗い生活を回避できたのかもしれません。ゴミ屋敷の前兆は、静かに、そして確実に、人の自尊心を奪い去っていく恐ろしい病のようなものでした。
最初の一歩を見逃した私の汚部屋転落記