数年前、地方で一人暮らしをしていた父が亡くなり、私は築四十年の一軒家を相続することになりました。幼い頃の思い出が詰まった我が家に、久しぶりに足を踏み入れた瞬間の衝撃は今でも忘れられません。玄関の扉を開けた途端、天井近くまで積み上がった不用品の山が目に飛び込んできたのです。父が亡くなる数年前から、実家がいわゆるゴミ屋敷化しているという噂は聞いていましたが、これほどまでとは想像もしていませんでした。かつて家族で団らんを楽しんだリビングは、古新聞と空き缶、そして何が入っているのか分からない段ボール箱に占領され、床のフローリングを見ることは不可能でした。キッチンには賞味期限が十年以上前に切れた缶詰や、真っ黒に変色した調理器具が散乱し、異臭を放っていました。私は絶望感に打ちひしがれながらも、まずは自力で片付けを始めましたが、一軒家という広大な空間に溜め込まれたゴミの量は、個人の手に負えるレベルではありませんでした。二階へ続く階段もゴミで埋まっており、二階の部屋に至っては、ドアを開けることすらできません。結局、私は専門のゴミ屋敷清掃業者に依頼することにしました。作業員五名が三日間かけて、大型トラック十台分もの不用品を運び出しました。その過程で、ゴミの山の中から父の古い日記や、私が小学生の頃に贈ったプレゼントが見つかったとき、涙が止まりませんでした。父は孤独を埋めるために、物を溜め込んでいたのかもしれません。清掃が完了し、空っぽになった実家には、ようやく爽やかな風が吹き抜けました。相続した一軒家をゴミ屋敷の状態から元に戻すには、多額の費用と多大な精神的エネルギーが必要でしたが、それをやり遂げたことで、私はようやく父との本当の別れができたような気がしました。もし、実家の異変に気づいている方がいるなら、手遅れになる前に、勇気を持って向き合うことを強くお勧めします。近年、多くの市区町村でゴミ屋敷対策条例が制定されており、行政による調査や指導が行われるようになっています。条例がある自治体であれば、職員が住人に対して指導、勧告、命令といった段階的な措置を取り、それでも改善されない場合には、最終手段として行政代執行、つまり強制撤去を行うことが可能になりました。しかし、代執行に至るまでのハードルは依然として高く、多額の公費負担や法的な要件の整理に時間がかかるのが現状です。