特殊清掃やゴミ屋敷の原状回復を専門とする私たちが、現場で最も神経を研ぎ澄ませる瞬間のひとつが、大量のライターが混在するゴミの山の撤去作業です。ゴミ屋敷においてライターは、単なる不用品を越えた「静かなる爆弾」と化しています。一見すると無機質なゴミの山ですが、その内部では有機物の腐敗による発熱や、夏場の直射日光による高温化が進んでおり、そこに使い捨てライターが紛れ込んでいることは極めて深刻な火災リスクを意味します。私たちが経験したある現場では、ゴミの重みによって下層にあるライターの着火レバーが押し下げられ、そこから漏れ出したガスに何らかの火花が引火し、あわや大惨事という場面もありました。ゴミ屋敷の住人は、ライターを使い切らずに新しいものを購入する傾向があり、現場からは数百本単位で中身の残ったライターが出てくることが珍しくありません。これらを一般ゴミと一緒に回収することは、環境負荷の面からも安全性の面からも絶対に許されない行為です。私たちは現場でこれらを発見するたびに、専用の回収ボックスに隔離し、作業後にスタッフが一本ずつ丁寧にガス抜きを行います。この作業には膨大な時間と手間がかかりますが、不法投棄や火災事故を防ぐためには欠かせない工程です。また、ゴミ屋敷の住人がヘビースモーカーである場合、ライターの周りにタバコの吸い殻が散乱していることも多く、その吸い殻が完全に消火されていないままゴミの中に埋もれることで、ライターへの引火を招くリスクも増大します。ゴミ屋敷という閉鎖的な空間において、一度火災が発生すれば、可燃物の山が燃料となり、消火活動は困難を極めます。私たちは清掃を通じて、住人に環境の改善だけでなく、こうした安全意識の重要性を説き続けています。たかがライター一本と思わず、それがゴミ屋敷という特殊な環境下では致命的な凶器になり得ることを、社会全体が再認識する必要があります。プロの視点から言えば、ライターの適切な管理と処分ができるかどうかが、ゴミ屋敷から脱却できるか、あるいは悲劇を招くかの分かれ目になると言っても過言ではありません。