特殊清掃やゴミ屋敷の現場を数千件担当してきたプロの視点から、清掃後に元の状態に戻ってしまう住人と、そのまま清潔な生活を維持できる住人の間には、明確な分かれ目があると感じています。インタビューに応じたベテラン作業員によれば、最も大きな違いは「清掃作業への関与度」にあるといいます。業者が全てを勝手に運び出し、住人がただ見ているだけの現場では、再発率が非常に高い傾向にあります。一方で、作業員と一緒に物を仕分け、何を残し何を捨てるかという苦痛を伴う決断を自ら行った住人は、その後の維持率が劇的に向上します。自分の手でゴミを袋に詰め、その重みと臭いを感じることが、脳に「二度とこの状態には戻らない」という強い記憶を刻み込むからです。また、もう一つの分かれ目は「清掃直後の環境の変化」にあります。元の状態に戻らない人は、清掃が終わった直後に、新しい趣味を始めたり、部屋の模様替えをしたり、あるいは長年壊れていた家具を新調したりするなど、空間に対して新しいポジティブな意味付けを行います。一方で、リバウンドする人は、ゴミはなくなったものの、以前と同じ古い布団で、以前と同じようにテレビだけを見て過ごすという「停滞した生活」に戻ってしまいます。つまり、清掃を単なるマイナスをゼロにする作業ではなく、プラスアルファの未来を作るステップとして捉えられるかどうかが、その後の命運を分けるのです。さらに、周囲とのコミュニケーションの有無も決定的な要因となります。孤独死予備軍とも言えるゴミ屋敷の住人にとって、清掃をきっかけに地域社会や福祉との繋がりを持てた人は、見守りの目があることで自制心が働きやすくなります。私たちは現場を去る際、単に綺麗になったことを喜ぶのではなく、お客様がこれからどのようにこの部屋で「生きていくか」という物語を共有するようにしています。元の状態に戻ることを防ぐ魔法の薬はありませんが、自らの意思で人生の舵を切ろうとするその一歩を、私たちは全力でサポートし続けています。
現場のプロが目撃したリバウンドする住人としない住人の分かれ目